すごいな…
B学童の新五年生のKNちゃんは全体的にちょっとふっくらした女子だ。
色白で肩まで伸ばしたセミロングの髪は、後ろでゴムでまとめていることが多い。
全体的な柔らかい雰囲気とは反対に目元はしっかりしていて、見せる笑顔は自然だが、時に眼光は鋭く、大人でもこの目には睨まれたくないなぁと思わせる程だ。
そんなKNちゃんが私と仲良くなったのは、去年の夏、彼女を含む何人かの女子グループに怖い話をしてくれとせがまれて、私のありったけの記憶力と創作力を振り絞って、怪談もどきを何話か披露してからだ。
昨日、外遊びの時間に校庭ですれ違ったら、そのままバックして走って私のそばにやって来た。
そして
「○○さん!怖い話して!」
と迫って来た。私は青空の下、とてもそんな気分にはなれず、
「そのサービスはすでに終了致しました!」
と返す。
「えっ!駄目!して!して!」
彼女の迫り方の迫力に負けて、桜の木陰に引っ張って行き、木の根元に二人腰掛けて、たまに舞い落ちてくる桜の🌸花びらを目で追いつつ、
私は何とか一話長めの話をし終えた。
そして、話題を変えたくて
「KNちゃん、もうお花見した?」
と聞いてみた。すると、
「婆ちゃんお弁当とか作らないし、行かないよ。」
「そうだよね。確か、KNちゃんはおじいちゃんとおばあちゃんと暮らしてるんだもんね。」
「そう、お母さんもお父さんも生きてるけど、別々に暮らしてるから〜
○○さん、誰にも言わないでね。お母さんは別の人と結婚して弟がいるんだけど、私もその違うお父さんと暮らしてたけど、私はそのお父さんに虐められて今おばあちゃん家にいるんだー」
私は、最近こういった子どもの話に驚かなくなって来た。悲しいことだけど。でも、虐められたと聞くと、黙ってられなくて
「えっ?何か暴力ふるわれた?痛いことされたの?」と聞き返した。
「そんなに暴力は振るわれなかったけど、言葉が凄くて、何でお前は出来ないんだとか、馬鹿なんだとかいつもいつも怒鳴られていた…」
「それ!凄い暴力だよ!…」
…………………
私は何か言うと自分の言葉が嘘くさくなってしまう様で、少しの間彼女をハグして、背中をなでるしか出来なかった。
続けて彼女が話すには、三年生くらいの時に三ヶ月ほど施設で保育されたらしい。勿論、施設での暮らしが楽しいわけは無く、その三ヶ月はもうこのまま自分はここに置き去りにされるのではないかと怖くて怖くて仕方がなかったという。
そりゃあそうだ。
そのあと、私達はおばあちゃんだと(私もほぼその域ではあるが)分かりにくいだろう今時の生理の対処方法やブラジャーの選び方など性について語り合った。聞けば、身体の大きい彼女はもう初潮をむかえていた。
KNちゃんは、決して暗くない。色々と辛いことが多いだろうことは容易に想像できる。でも、彼女は笑い飛ばす強さを持っている。凄い!