子どもの悪意
A学童で何年か前にあったことだ。
確か三年生の女子だったと思う。私がA学童に勤務し始めて間もない頃だ。
少し言葉がきつくて、パートの私に
「どうせ、パートでしょう!」
と言って、ボーとして立っていると、
「邪魔!どいて!」などとキツイ言葉で移動を強要された。
最初は軽く、ショックを受けて今時の小学生はこんな感じなのかな、慣れなきゃいけないなぁと頑張って、彼女らに打ち解けてもらうよう努力をした。
ある日、彼女達から隠れん坊を一緒にしようと誘われて、誘われた嬉しさからウキウキして仲間に加わった。私が鬼になった時、探しても探しても誰も見つからないので、一度部屋に戻ったら、何食わぬ顔で全員が他の遊びに興じてた。
私は悲しい気持ちよりも怒りが込み上げてきて、何か注意した記憶があるが、結局その子達とは彼女達が卒所するまで心から打ち解けられることはなかった。
この話を私は友人にしていたらしい。当の本人はすっかり忘れていたが…
友人は今でもその話を覚えていて、「いくら子どもがしたこととはいえ、その話は酷過ぎると思った。あなたがそんな職場にいて心配した。」
と言ってくれた。
人としてやって良いこと。悪いこと。この線引きは凄く難しい。
その言葉やその行動で、人の気持ちを踏みにじってないか、
そこは大きく拘りたい。
え、掃除機を使ったことないの?
私たちの私設児童館によく来るTK君(2018・5・18の記事を参照ください。)は、中学一年生としては色々と出来ないことが多い。
未だ、繰り下がりの引き算ができない。コンビニの袋の口を縛ることができない。風船を自分だけで膨らませることができない。🎈
興味のないことは大切なことでも覚えておくことができない。癇癪を起こすと、自分を抑えることができない。
先日、彼が紙を細かく切って風船に入れて遊んでいたのを横目で見ていた。
テーブルの下に細かく刻まれた紙切れが結構落ちたままになっていた。ひとしきり彼が遊び終えたところを見計らって、
「これだけ、散らかしたのだから、自分で責任を持って片付けようか?」
と話したら、
「うん、わかった。箒はどこ?」とお利口さんな返事。^ - ^
「箒は無いから、あそこにある掃除機を使おうか。」
「えー!俺、掃除機使ったことないから無理!」
私は思わず、
「うそ!!」
と言ってしまった。
そして、「もしかして、音が怖くて使ったことないの?」
と聞いてみたら、
「そんなことないよー」
との返事。彼に聴覚過敏があることを感じたことはなかった。カラオケも喜んで🎤いて、結構な音量で歌う。
取り敢えず、スイッチを入れて吸わせるだけだからと簡単な説明をしてTK君に持たせてみた。
すると、それは楽しそうにあちこち吸わせ始めた。楽しそうなので、他の場所も掃除機をかけさせた。
そして、
「俺、小さい頃に一度だけ掃除機を触って、お母さんの大切なものを吸わせちゃって、それから触ったことないんだったー」
と思い出したことを話した。
彼の様な個性を持った子を育てるのは本当に大変なのだろう。お母さんの気持ちも、大変さも伝わってくる。
ただ、TK君の様な子どもは他の子ども以上に色々な体験を沢山させてあげたい。彼らの独特な感性はどの様な経験で芽吹いていくのか、わからない。
先日の花火も本当に喜んでいた。
付き合うのはなかなかしんどいこともあるが、気がついた周りの大人が丁寧に接していくことで随分変わっていくのではないだろうか。
明るくて社交的で可愛らしいTK君の良いところをもっと伸ばして欲しい。
やっぱりそうなっちゃうよねー
B学童でのこと。事の始まりはこうだ。
仲良しの二年生男子のTG君(2017・5・16の記事を参照下さい。)が先日私におずおずと言ってきた。
「○○さん!僕もフリーザを持っているから、あげる!」
私は私設児童館で交流のある中学生とガチャポンでドッカンバトルのキャラクターストラップの収集を競っている。
それを水筒の端にたくさんぶら下げている。
おやつの時間に一緒のテーブルについた子ども達を少しでも元気にしたくて持って行ってる。
が、そもそもそれも、おもちゃ的な物をぶら下げ、学校に🏫不必要な物を持参することを禁じられている子ども達に対して、どうなのかという議論があるだろう。でも、私の持ち物であるし、色とりどりで楽しいキャラを見るだけでちょっと顔が和らぐ子どもが多いので、他の大人の厳しめな視線に耐えつつ持って行っていた。
なので、私のコレクターに一つ寄与したいというTG君の申し出を最初は、
「学校におもちゃとか持って来ちゃダメなの知ってるよね?」
とか、
「お母さんがいいと言わないと、もらえないからね。」
とか言って、断っていた。
が、彼が大丈夫、大丈夫と言って、目をキラキラさせながら、持って来たがっているので、
「じゃあ、今度ねー」と8割実行しないだろうと踏んで、返事をしてしまった。
ところが、数日して彼はニコニコしながら、小さくて白い体のフリーザを握りしめて持って来た。
そして、又例のキラキラな目で私にフリーザを差し出して来た。
お母さんから許可をもらったのかは知らないが、学校の先生に見つからないよう、ドキドキしながらここまで持ってきたのだろう。その様なものを私はつき返せるわけもなく受け取って、私のコレクターのほかのキャラと一緒に水筒にぶら下げた。
数日後、仕事を休んで外出していた私に施設長から直接電話がかかってきた。
施設長にTG君の母親から電話があり、嘘をついて、家から例のストラップを持ち出した彼を問い詰めたら、私の名前が出てきたというのだ。
私はその電話で事実をすぐに認めた。
翌日、お迎えに来たお母さんとTG君の前で、きちんとこうなった経緯をお話しして謝罪したら、お母さんはすぐに理解してくださり、かえって先生に迷惑をかけてごめんなさいと言ってくださった。
私は正直そんなに懲りていない。
私もTG君も色々学べたし、ちょっとワクワク出来たからだ。
ここは、お金をかけて欲しいです。
B学童の一年生に一定以上に気温が高くなると、痙攣を起こしやすくなる女の子がいる。
私はとても、暑がりで汗かきなので、彼女には申し訳ないが彼女のお陰で施設内の冷房を低めに設定してもらえてありがたい。
ここのところの日本の夏は本当に厳しい。湿度と気温がWで上昇すると、汗が蒸発しないので、体感の暑さが熱さに変わる。
夏になると日当たりの良い校庭は、すぐに40℃近くまで上がる。校庭の端に本館のあるB学童の施設はなかなか暑さが厳しいうえにB学童は、全児童を受け入れているので子どもの人数が多くて、真夏になるとエアコンの効きが非常に悪くなる。
増してや校庭の中に掘っ建て小屋の様に建っている別棟などは周囲に木も無く、壁も薄くて、ダイレクトに日射されるので、20℃以下にエアコンを設定しても、室温が下がりにくい。
今や熱中症は珍しくなく命に関わることなので、もう少し何とかならないかと考える。
今日も真っ赤な顔で汗で額を光らせながら、校庭を駆け回ってる。💦🏃🏻♂️😊☀️この子達が安心して過ごせる場所作りのために、環境を整えることを優先して欲しい。
そっかあ。わかるけど、やだなぁ。
B学童の四年生の男子HH君は、とにかくずっと明るい子である。私にとても懐いていて、校庭にいると私を探して見つけて駆け寄ってくる。
「せんせぇー!!!」
私はこう呼ばれるのは苦手なので、
「○○さんですが、何か御用でしょうか?」
とすっとぼけて答える。
彼はデヘデヘと笑って、私の手を握りしめていつもの様に手の甲にキスをしてくる。🤛🏻💋
最初は、やらない様に注意をしていたが、最近はもう諦めている。😑
彼は独特な妄想の世界を持っていて、いつもわけのわからないことを一方的に話してくる。この話に付き合うのはなかなか骨がおれるのだが、時間のある時はなるべく出来る範囲で注意を向けて聞いている。
彼は聞いてもらえるのが嬉しくていくらでも話しかけてくるが、折角色々な友達が遊んでいるのだから、可能な限り、私は他の子も集めてポコペン(缶蹴りの様な遊び)などをして彼を皆んなに馴染ませようと頑張っている。
しかし、集団遊びが下手ですぐにふざけてしまい、他の子を怒らせるか、呆れさせるかして、遊びの仲間の輪からはもって15分程で脱落してしまう。
そのHH君が私の気を引こうとしてか、つくづく隣の新卒スタッフを見てから、
私に向かって
「おばあさんさあ。」
と話しかけてきた。
私は軽いショックを受けた。まあ、50代にギリギリぶら下がってる私はもうそう呼ばれても仕方がない歳なのだが、頭の中は未だ未だ30代なので、受け入れられない!
「なんで?せめておばさんって呼んでよ!」
と言ったら、HH君は、
「だって、おばさんは失礼じゃない。」
という。
彼は女性に向かって おばさん と呼ぶのは失礼でいけないことだと思っていた。
確かに若いバイトのお姉さん達に向かって他のやんちゃな子たちが「おばさん」とか「ババア」とか呼んでいるのを見て聞いて、彼はそう感じているのだろう。
なるほど…とてもピュアな子で、悪巧みや嫌味や底意地の悪さが全く通じないHH君。私がちょっと痩せると
「○○さん、痩せたでしょ。」
とすぐ気づいてくれる。髪を切っても、新しいTシャツを着ていっても、最初にコメントしてくれるのは、彼だ。
明日、彼にとっての『おばあさん』の定義を聞いてみようと思う。
教えたい。でも、やり過ぎなのかしら。
私たちの施設児童館のヘビーユーザーのTK君。
先週はフツーに来てくれたが、もうお相撲はすっかり辞めることの結論が出た様で、大好きなK- 1の話題を楽しそうにしてくる。戻って来てくれてそれは良かったのだが…
この日、おやつを買いに行き、グミやガムのゴミ屑を小さなスーパーの袋にまとめて入れて、ギュッと袋の口を縛って大きなゴミ箱に入れるように指導したら、ナント袋の口を結ぶことが出来ない!
やはり…と思った。方向音痴でもあるTK君は空間認識能力が低いのだ。
私はTK君の前で、ゆっくりスーパーの袋の左右の取っ手のところを重ね合わせ、片方を交差した部分の下に潜り込ませて結んでみせて、それを二度ゆっくりと繰り返して、固結びをしてみせた。
彼はゆっくりとそれを真似しようとしたが、全然できない。私は何度かトライを促したが、すぐにそれを拒絶してきた。
あぁ。これは彼の脳にはとても負荷がかかるのだなと思い、彼がDSで遊び始めたので無理強いはしなかった。
でも、このままではゴミ出しにも行けない大人になってしまうと考え直し、紐っぽいものを用意して、10分ほどしてから再度挑戦してもらった。
そっぽを向いて嫌がるTK君を宥めすかして、何度が付き合ってもらったが、最後にはテーブルに突っ伏してしまった。
そして
「疲れたぁ〜〜もう〜マジめんどくさいし〜」
と言って完全に放り出してしまった!
私は
「ごめん、ごめん、疲れたよねー」
と言ったら、
「○○さん!本当に俺の気持ちわかってる?」
と嫌ーな顔をして目を瞑ってしまった。
本当にとても疲れるようなのだ。私たちには想像出来ない脳の疲れを感じているらしい。
悪かったと大いに反省した。次回はもっとうまい工夫をしてみようと考えた。
胸が熱くなった…
B学童の二年生の男子のYT君は、色白で痩せていて、アトピーが少々きつくて切れ長の目が涼しくて、じっとしていられない、自由な行動をとってしまう子である。(2017・8・23を参照下さい。)
彼には、保育園に預けられている小さな弟が二人いる。お母さんの仕事はマスコミ関係でとても忙しい。延長保育の時は時々お父さんが迎えに来る。
彼と距離を縮めたのは、けん玉がきっかけだった。けん玉には『10回の試技中一回大皿に乗せられたら10級合格』などの検定がある。
少し発達障害の傾向のある子ども達は先の見通しがはっきりしてる遊びが好きだ。頑張れば、級が上がっていく為、自己達成感も味わえるけん玉にハマる子ども達は多い。拘るといつまでも、けん玉を握ってカチカチやっている。
YT君も私の目論見通りにハマってくれた。私にもとても心を許して遊んでくれるようになった。学習タイムはいつも私の膝の上が指定席だ。
そんな彼と遊んでいたら、施設の玄関からそっと中を除きこむ顔が見えた。
YT君と、とても仲良しだったRY君だ。RY君は、ご両親の都合で今週東京から500km以上離れた遠方に引っ越す。学校に挨拶に来たらしい。学童は先週退会している。
RY君は、大きな目に涙を溜めていた。
彼は普段から可愛らしい高い声でゆっくりとお話しする、それは優しい子だ。
YT君は、黙っている。この沈黙が切なくて、私ももう一人その場にいたスタッフも目元を押さえずにはいられなかった。
RY君のお父さんが
「YT君!仲良くしてくれて本当にありがとうな!」
RY君が、
「YT君、元気でね…」声を絞り出した。
YT君は、しばらく黙ったままでいて、
俯いたまま、一言
「うん…」とだけ言った。
そのあと、フツーに遊べていたが、YT君の心の内を察すれば、今週は出来るだけ彼の遊びに付き合ってあげようと心に決めた。