うーん、保留状態?
A学童の三年生JU君は、とにかく(可愛い女子の様に)顔が整っていて、声は高く些か大きいが、基本的におとなしい子だ。
だが、とても空気を読むことが下手で自分のことしか考えられない残念なイケメンだ。困ってる誰かを手助けする、誰かと競い合うといった場面からはいつも逃げる。面倒くさかったり、苦手だったりするようだ。でも、彼は暴れたり、騒いだりすることはあまりない。
人懐こくて、気が向けば誰にでも親しげに話しかけるが、気分にムラがあっていつもそうとは限らない。
遊びも自分の興味にそぐわないとすぐに途中で放り出してしまう。
こんな性格だから、特に親しい友達もいなくて学童の部屋の中では一人で本を読んでいたりすることが多い。
手持ち無沙汰になると、大人がどんなにアタフタしていても、
「あのう、暇なんだけどさあー
何して遊んだらいい?」
と、時に切羽詰まった表情で聞いてくる。こんな風だから、大人受けもあまり良くない。
こんなJU君が、この頃少しワイルドになってきた。
今まで挑戦したことのない相撲大会に出ることを決めたり、学童の仲間とも言い争いをする様になった。それはそれで、私は彼の成長を喜ばしく思っている。
先日、一年生の女子のMIちゃんが、右手首を抑えて大泣きをしていて、臨時職員のAさんが困り果てていた。お節介おばさんの私は、何が起きたかAさんに聞いてJU君を傍らに呼びつけた。
「JU君、何でMIちゃん泣いてる
の⁉︎」
私はそんなに普段大声で泣かないMIちゃんが手首を捻られて痛くて泣いていることを確認して、JU君に何故そんなことをしたのか、問い質した。
彼は悪いと思っているのか、私に睨まれて怖いのか、もう涙をポロポロと流していた。彼が言うのには
「僕が絵を描いていたら、MIちゃんが横から邪魔してきて、変な絵を僕の紙に勝手に描いたりしたので、やめてと言ってもやめてくれなくて、それを三回もしてきたから。」
「だからといって、暴力を振るっていいの?」と言うと、
「やられっぱなしは嫌だから。」
と答える。
「あんなに痛そうに泣いてるよ。
いいの?」
「うん、仕方がなかったから」
「もし、跡が残ったりしたら大変なことになるよ。」
「そこまではやってないから」
私はどんな場面でも暴力はいけないことを説明したが、とうとう納得してもらえなかった。勿論、MIちゃんにも友達にしつこくしてはいけないということをよく話した。そして形としては『ごめんね。いいよ。』
はできたが…
彼にきっちり説明できるようになるまで保留にすることにした。