こういう場合は?
B学童のMK君は三年生だ。
彼は将棋が大好きで、今は何処かの教室に通っているらしい。私が時間に余裕がありそうな頃合いを見計らって
「○○さん!将棋やろう!」
と誘ってくる。私は少し前までは彼の誘いにほぼ乗っていたが、最近は三回に二回は断ることにしている。対戦相手をディスりながら、勝負を進めるやり方を、いくら注意してもやめないからだ。私はほぼ負ける上にずっと、『あほ』だの『カス』だの言われて不愉快な時間を過ごすことに耐えられなくなってきたからだ。
昨日も、久し振りに相手をしてやろうと重い腰をあげた。珍しく私が優位な形に追い込んだ。
そもそも、MK君が私ばかりを誘うのには訳がある。
彼は同級生達曰く、嘘つきでズルくて、卑怯なのでこの頃結構嫌われているのだ。
外遊びも、おやつの時も一人になることが多くなった。
心配していた通りの展開だ。
さて、二人で将棋盤を囲んでいると、周りに同級生男子達がゾロゾロと集まって来た。勿論、全員私の味方になる。○○さん、こうしろ、ああしろと煩いこと極りない。そしてここぞとばかりにMK君に悪口を言いまくる。こうなるとMK君が辛そうなので、私は二人だけでやらせてと彼らを追っぱらおうとするも、全然ダメだ。こんな状況で勝てる訳もなく、私はアレヨアレヨというまに、詰められた。
将棋の勝敗の行方よりも、MK君の心のうちが気になった。四、五人の同級生達にあれこれ言われるのは辛かろう。でも、寧ろこういう状況を生んでしまった本人が、しっかりそこを理解して、今後、どうしていったら良いかを考えるべきだとも思った。
結局、勝負のあと、私の目の前で私を一番応援したSO君がMK君に「ザコ」の一言を言われて、おでこをパンと叩いた。負けじとMK君も拳を前につきだしたが、当たらず、取っ組み合いの喧嘩になりそうだったが、(本当はもっとやらせたかった)他のスタッフの手前、私は二人の間に割って入った。圧倒的多数がSO君を応援する!物凄い音量の声援だ!
もう、おやつの時間が始まりかかってるので、私は二人を止めるしか出来なかった。
多分、凄く傷ついて、悔しかっただろうMK君の気持ちのフォローが出来なかった。
ただ、帰り際には彼はけろっとしていた。そう見せていたのかどうかは彼にしか分からない。
どうなんだろう。
自分が招いた結果の多勢に無勢その他の状況を、本人が直接体験して心底身に染みて感じるべきなのか、MK君が受けるであろうダメージを慮り、周囲が配慮して回避させてやるのか、どちらを、選択すべきなのだろう?
大規模で忙し過ぎるこの学童で、MK君がもはや、『ばい菌扱い』寸前まできているかもしれないことに気づいている大人が他にいるとは思えない。
どうしたらいいのだろう。